有機構造には鏡像異性体というものがあります。
これはいったい何でしょうか。
エナンチオマーとかキラルとかいうカタカナもよく聞きますよね。
今回はこれについてまとめていきたいと思います。

鏡像異性体(エナンチオマー)とは

鏡像異性体は英語でエナンチオマーと言います。
このエナンチオマーとは分子構造を鏡に映すと反転した構造が見えますよね。
この鏡に映す前の構造と映して反転した構造が同じ構造ではないとき、互いをエナンチオマーと言います。
よく言われるのが右手と左手の関係です。
手は手のひらを合わせると鏡に映したようになりますよね。
そして左手と右手は手のひら同士を合わせることはできても、爪の向きや指の種類を合わせて重ねることはできませんよね。
このような構造の分子をエナンチオマーと言います。

反転して同じではない構造の多くは不斉炭素を持っています。
この不斉炭素とは4つの異なる置換基が結合している炭素のことです。

例えば乳酸が挙げられます。

キラルとは

そしてエナンチオマーのことをキラルであると言います。
キラルとは鏡像(鏡に映して反転した構造)と一致しない性質のことを言います。
キラルは英語でchiralと書き、この単語は形容詞です。
エナンチオマーはキラルな分子という名詞なので、そこがエナンチオマーとキラルの違いです。
またキラルな性質のことをキラリティーと言います。

カーンインゴールドプレローグ則(Cahn-Ingold-Prelog rule)

さっき例に挙げた乳酸の構造の名称にはSとRという表記があります。
これがエナンチオマーの種類を表しています。
それぞれSはギリシャ語の"sinister"の頭文字で左を意味し、Rはギリシャ語の"rectus"の頭文字で右を意味しています。

その右左というのは、原子番号が大きいものを順位を高いものとし、一番順位の低い原子を後ろに持ってきたときの順位並びが右回りか左回りかを表しています。

さっきの乳酸で考えると以下のように順位を付けられます。

Hが一番順位が低いため、これを自分から見て奥に位置するように動かし、順位を辿ってどっち周りになるかを考えればSかRを決定できます。
また今回は不斉炭素の隣に炭素が2つありますが、隣の順位が同じ場合はさらにその隣の原子の順位を比べることで順位に差をつけられます。
今回はメチル基の隣はHであり、カルボニル基の炭素の隣はOのため、O>Hとなり順位が決定できます。

順位を辿るとき、Rの乳酸のように一番順位の低い原子が手前にあるときは、わざわざ一番奥にもっていかないで、手前に置いといたまま順位を辿った方が楽です。
そうして決まったのがSだったら逆のRとなります。
一番順位の低い原子を奥と手前で入れ替えるとRとSも入れ替わるからです。

ジアステレオマーとは

エナンチオマーには互いに鏡に映した構造の2種類とは限りません。
不斉原子が2つ以上あると、エナンチオマーは複数生じます。
一般的に不斉原子がn個あると、2のn乗個のエナンチオマーがあります。
そのため互いに鏡に映した構造でないエナンチオマーが生じてきます。
これをジアステレオマーと言います。

まとめ

エナンチオマーについてまとめました。
エナンチオマー同士だと似た構造なのに性質が変わってきたり、天然物では一方のエナンチオマーしか存在しなかったりと面白いことが多いです。
是非興味を持ったら調べてみてくださいね。