アルケンとアルキンの酸性度

アルケンとアルキンの酸性度はどう考えればよいでしょうか。
これは混成軌道から考えられます。
アルケンはsp2、アルキンはsp、ついでにアルカンはsp3軌道です。

炭化水素ではs性が高いほど酸性度は大きくなります

s性が高いとは、s軌道の割合が大きいほどという意味です。
spではsとpが1:1で50%、sp2ではs:p=1:2より33%、sp3ではs:p=1:3より25%となり、pの割合が小さくなるほどs性が大きくなります。

s軌道は球体で、p軌道は8の字ですよね。
またp軌道はs軌道よりも外側に多く位置します。

これよりs軌道は核に近いところに多く分布しているため、核のプラスの電荷と電子のマイナスの電荷が強く引きあって安定化しているのです。

そのためs性が高いほどプロトンが取れて余った電子が核に強く引き付けられて安定化します。
すなわちs性が高いほどプロトンが解離した構造である共役塩基の構造が安定であるということです。

よって酸性度は
アルキン>アルケン>アルカン
となります。

また不飽和結合の隣の炭素に結合している場合には、共役塩基の取りうる共鳴構造が多いものほど酸性度が大きくなります。
これは多くの共鳴構造をとれるほど、負電荷を分散しやすくなるためです。

アルケンの安定性

アルケンの安定性は何で決まるでしょうか。
それは超共役結合の強さ、立体ひずみの3つによって決まります。

超共役とは、二重結合の反結合性π軌道と隣にある電子の詰まった結合性C-H σ軌道との安定化相互作用のことです。

どういうことかというと、原子の結合は原子軌道が合わさってできた分子軌道で考えられます。
原子軌道が組み合わさると電子が詰まって安定な結合性軌道と電子のない不安定な反結合性軌道の2つが生じるのです。
この分子軌道より、二重結合の隣の炭素のC-H結合の電子の入っている軌道が二重結合の電子の入っていない軌道に電子を与えることで安定化するということです。

これは二重結合の隣にメチル基があると、そのメチル基からプロトンが取れたときに共鳴構造が取れるから、とも言い換えられます。

結合の強さとは、sp2軌道とsp3軌道の結合はsp3同士の結合の強さよりも強いということです。
これはさっきのs性の話と同じで、sp3が2つよりsp2とsp3の方がsの割合が大きくなるため強く引き合うためと説明できます。
例を挙げれば、1-ブテンと2-ブテンではsp3同士の結合が1-ブテンの方が3個に対して2-ブテンでは1個であるため、2-ブテンの方が安定であると言えます。

ちなみにs性が大きいほど強く引き合うために結合長が短くなります。


超共役と結合の強さから考えると、二重結合は置換基(H以外)が多いほど安定であるということがわかります。


立体ひずみとはシストランスのことです。
シスよりトランスの方が置換基が離れているので置換基の反発による不安定化が小さくなって安定です。