原子はプラスに帯電した原子核とその周りを雲のように漂う電子からできています。

そのためその+と-が打ち消しあって中性となっています。

しかしその電子が偏ったところにあると、原子内や分子内に+と-のところが生じます。

この電荷の偏りが双極子モーメントです。


この双極子モーメントは+と-の部分があるため他の電荷と影響を及ぼしあいます。

今回はその相互作用についてまとめていきたいと思います。


点電荷-点電荷

まず双極子モーメントの前に単純な点電荷を考えます。


この時のポテンシャルエネルギー、すなわち電場による位置エネルギーは次の式で表されます。


この時ε0は真空の誘電率です。

これを基本として他の場合を考えていきます。


双極子ー点電荷



左が双極子、右が点電荷の時です。

このときは点電荷-点電荷の時と同様にしてq1とq2、-q1とq2のポテンシャルエネルギーをもとめ、その和が全体のポテンシャルエネルギーとなります。

しかし今回は少し難しく、1/(1+x)と1/(1-x)のテイラー展開による近似が必要となります。

そのようにして計算すると次の式が得られます。




そして双極子があるため双極子モーメントは



の関係が成り立つため、これを代入して


となります。


双極子―双極子

双極子と双極子の場合は双極子ー点電荷の点電荷を双極子にしただけです。

双極子同士の4つのエネルギーを求め、その後双極子モーメントを求めて代入するだけです。


また双極子同士の場合には以下の2パターンが考えられます。


1)同一直線状にある場合


これも同様にテーラー展開による近似を経て次の式が得られます。




2)角度θで平衡にある場合

これは(1+x)^nのテイラー展開による近似を経て以下の式となります。


双極子―双極子の相互作用について

2個の双極子同士のポテンシャルエネルギーについてみてきましたが、これは分子の状態によって異なってきます。

固体の場合は角度θで平衡に並ぶときと同様です。


しかし分子が液体や気体になってくると変わってきます。

なぜなら分子が回転するようになるからです。
回転することによって以下の特徴を持つようになります。

特徴

・ポテンシャルエネルギーが距離rの6乗に反比例

・温度に反比例

・平均的な相互作用は引力となる

この相互作用をキーサムの相互作用と言います。


双極子―誘起双極子

誘起双極子についてはこちらですでに説明しました。

実は誘起双極子を誘起する外部電場は分子でもいいんです。
極性分子の+と-の電荷の偏りから生じる電場も外部電場として働きます。

そのため極性分子によって無極性分子に有機双極子モーメントが生じることがあります。


特徴

・ポテンシャルエネルギーが距離rの6乗に反比例

・温度に依存しない

どうして温度に依存しないのかというと、この組み合わせの時は回転の影響を受けないからです。
温度が高いほど分子が回転しやすくなります。
しかし今回は双極子ー誘起双極子という組み合わせのため、分子が回転しても誘起双極子は双極子に誘起されて同じ向きとなるからです。


誘起双極子ー誘起双極子

実は誘起双極子は外部電場がなくても生じます。
なぜなら原子は中心に原子核、周りに電子雲があるわけですが、この電子雲は瞬間的には偏ることがあるからです。
外部電場がなくても電子雲の偏りが瞬間的に生じることで双極子が生じ、その双極子が無極性分子に対して作用してまた双極子が生じるのです。

これをロンドン力と言います。


特徴

・ポテンシャルエネルギーが距離rの6乗に反比例


ちなみに相互作用の強さは以下のようになります。

イオン間相互作用>水素結合>双極子相互作用>ロンドン力>分子間の万有引力

こうみると弱い相互作用のよう見えますが、分子間の万有引力より10^35ほど大きいので比較的強い相互作用なのです。